野外調査


熱水性鉱床と花崗岩の研究

熱水性鉱床の生成における花崗岩類の役割を解明するために熱水性鉱床と花崗岩の研究を行っています。
1つの大きな課題は、鉱床を伴う花崗岩と鉱床を伴わない花崗岩との違いが何に起因するかということであり、今までに当研究室で行ってきた鉱物−塩化物水溶液間におけるイオン交換実験からは、超臨界熱水条件下では、高温・低圧条件下で遷移金属はトリクロロ錯体等の高次錯体を形成しやすいことが明らかになってきました。このことは、高温・低圧条件下、すなわち、浅い所で花崗岩質マグマが固結した場合に、熱水中に遷移金属が溶存し易く、従って鉱床を生成する可能性が高いことを示しています。


そこで、この作業仮説が正しいかどうか明らかにするため熱水性鉱床を伴う花崗岩と伴わない花崗岩との比較研究を行っています。特に、花崗岩の固結圧力に系統的な違いが無いか調査を行っています。今までに日本、韓国、タイおよびカンボジアの花崗岩類を調査し、黒雲母中のAl含有量が固結圧力と比例すること( 黒雲母地質圧力計)が明らかになってきました。この結果から、Pb、Zn、Cu、Fe、Moを伴う鉱床は生成圧力が相対的に低く、Sn、W(還元型)を伴う鉱床は相対的に生成圧力が高いことが明らかになってきました。(Uchida et al., 2007, 2012)



現在は、カンボジアの花崗岩に続いて隣国であるタイおよびベトナムの花崗岩の調査を行い、インドシナ半島全体における花崗岩の生成と熱水性鉱床の生成との関係をテクトニクスの立場から解明しています。

カンボジアの深成岩類は、メー・ピン断層を境に北東部と南西部ではその化学的および物理的特徴に著しい違いがあることが判明しました。北東部の深成岩類は、主として帯磁率が高く磁鉄鉱系で、かつ、I タイプであり、REEパターンにおいてEuの負の異常を示さないことがわかりました。また、Sr-Nd同位体比の測定結果、マントル物質起源(アダカイト)であることが判明しました。それに対し、南西部の深成岩類は、主として花崗岩に分類され、イルメナイト系であり、多くがI タイプであり、REE パターンにおいて負の異常を示すことがわかりました。また、Sr-Nd同位体測定結果からその起源物質には大陸地殻物質の影響が大きいことが判明しました(Cheng et al., 2019)。また、ジルコンU-Pb法を用いて北東部および南西部の深成岩類の年代測定を行いました(Kasahara et al., 2021;Uchida et al., 2023)。

タイではバンコク南東部およびプーケット島とその北部の花崗岩類に対して既に調査・分析を終え、バンコク南東部の花崗岩類に対しては既に論文として発表しています(Uchida et al., 2022)。プーケット島とその北部の花崗岩類に関しては現在投稿中です。

べトナムでは、コントゥム周辺およびダナン周辺の花崗岩類に対して調査を行い、各種分析を終えました。コントゥム周辺の花崗岩類およびダナン周辺の花崗岩類に関しては既に論文として発表を終えたところです(Uchida et al.,2023, 2024)。




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