実験



鉱物−塩化物水溶液間におけるイオン交換平衡実験


鉱物や熱水の物理化学(熱力学)的性質を調べるために超臨界熱水条件下において鉱物と塩化物水溶液間のイオン交換平衡実験を行っています。このような実験からは、鉱物固溶体の熱力学的性質、鉱物相平衡、熱水中における金属の溶存状態、鉱物生成に関与した熱水の化学組成等に関する情報が得られます。
実験には、標準的なコールド・シール型(テスト・チューブ型)高圧反応容器を用いて行います。実験条件は、一般的に400〜800℃、0.5〜1 kbとしています。 今までに私たちの研究室では、鉱物として柘榴石、イルメナイト、閃亜鉛鉱、磁鉄鉱、スピネル、カンラン石、灰重石・鉄マンガン重石、輝石、準輝石、長石、コルンブ石、黄鉄鉱、磁硫鉄鉱、輝コバルト鉱、硫砒鉄鉱等を用いて実験を行い、これらの鉱物の相平衡図の作成、固溶体の熱力学的性質などを求めています。
また、イオン交換平衡に及ぼすNaClやKClの影響を調べることにより、超臨界条件下における金属の溶存状態に関する情報を得ることもできます。



今までに、CaWO4-MeWO4系、 CaTiO3-MeTiO3系等を用いて Fe2+,Mn2+,Co2+,Ni2+, Zn2+,Cd2+,Mn2+,Sr2+、Pb2+、Sn2+ の溶存状態に関する情報を得ています。その結果、遷移金属はNaClの存在する熱水中では主としてトリクロロ錯体として存在し、かつ低スピン状態の4面体配位をなしていることが分かりました。他方、アルカリ土類金属は中性溶存種として存在することが分かりました。

これらの実験に加え、鉱物と熱水溶液間における多元素同時分配実験を行っております。これらの実験を通じて元素分配を支配している要因の解明に取り組んでいます。



今までに行った実験から、Znは4配位席では正常な分配挙動を示すのに対し、それ以外の席(例えば、6配位席、8配位席)では、負の分配異常を示すことが明らかになりました。また、Coは珪酸塩鉱物において負の分配異常を示すが、その強さはSiO4四面体の重合度に比例する傾向が見られます。さらに、Niは複酸化鉱物において正の分配異常を示すことが分かりました。これらの元素に対し、Mg,Ni,FeおよびMnはそのイオン半径に従った分配挙動を示すことが明らかになりました。


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